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◆ 無題
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明石のおじさん
2012/03/03 (Sat) 05:46

7.ヨーロッパデビュー

「いやぁ。初めての海外旅行やし、うれしいな」
「あほ、何言うてんねん。遊びに行くうんとちゃうやろ」
「アーララ、お兄ちゃん、何ひがんでるんや」
「あほ。ひがんでなんかないわ」
「ユキ、あんた、世界の檜舞台に選んでもろて行くんやから、しっかり体調整えて万全のコンディションで行かなあかんで。特に、あんたは、食べ物とか気をつけな、太りやすいし。それから、こんど行くソフィアは、ブルガリアやから向こうでヨーグルトとか食べ過ぎたらあかんで。試合終わってからにしいや。それから、水道の水は絶対飲んだらあかんで。
それから、・・・」
「おかあさん、そんな言わんかて、ようわかってるわ。私は、ほんとはすごい不安やねんけど、それに心を支配されんように、明るくコントロールしようとしてるんや」
「ほんまか。食べもん、気いつけや」
「ホンマにしつこいわ」
「ユキ。そろそろ登乗時間やわ。海野コーチも合図してきたわ」
「ほな行ってくるわ」
「気い付けてな」
「がんばって来いよ」
「行ってきまーす」


「ふー。やっと着いたわ」
「いよいよやね。ユキ」
「はい、海野コーチ」
「こっちは何言うたって、日本とちゃうし。やっぱり、前に言うたとおり採点基準が違うのはホンマみたいやわ」
「ふーん」
「私の見たところ、ユキが普段通り、あんたが考えてるスケーティングができたら、ええとこ食い込めるかもしれへんで。まあ、今日はとにかく、時差調整やな」
2人は、他の参加メンバとともに宿泊するホテルへ向かい、翌日の試合に備えた。
 
 「さあ、行っておいで。私のユキ」
 「はい」
 ユキは、勢い良くリンクへ飛び出した。
 ユキの世界デビューショートプログラムは、新しい形のフラメンコとともにスタートした。
 ユキのスケーティングが始まると会場は、いきなり静まり返った。
ほとんど音がしないエッジワークに、しなやかでかつ大胆に揺れ動く、曲線美を追求した上半身の流れ。
 最初の3回転ジャンプが決まった。
 会場全体が、我を思い出したかのように、拍手に包まれた。
 この瞬間に、ユキはヨーロッパで伝説のスケータとして歴史を刻み始めることになった。
 ユキは、スケーティングに集中しながらも思った。
 「何や。この人たちは」
 「私のスケーティングをほんまにわかってくれてるんやろうか」
 「日本やったら、ジャンプ跳んだら大喜びで、後はほとんど知らん顔みたいなもんや」
 「よっし。思いっきり、やったろうやろうやないか。私のスケーティングを」
 「海野コーチから、採点に関係ないから言うてとめられてたあれもやったろ」
 後半に差し掛かったところで、スパイラルからレイバックイナバウア。
 ジャンプでもないのに、会場は静まり返った後、また拍手の渦となった。
 そして、最後のステップを終えて、レイバックスピンが決まると、観客は総立ちで、ユキへ惜しみない拍手を送った。

 そして、フリープログラムでも観客のハートを鷲掴みにしたユキは、海野コーチとキス&クライへ座った。
 海野コーチが耳元で囁く。
 「ひょっとしたら、ひょっとするかもしらんで。ショートで1位やったし」
 「うん」
 「あんたには、やられたな」
 「えっ、何を」
 「決まっとるやないの。あんたのスケートをや」
 「ふふ。ここの人たちはスケートをよう知ってるはるわ。日本と違って」
 「もう、スコアでるわ」 

 会場から、大歓声が沸き起こった。
 「ええ。コーチ、ホンマかいな。夢でもみてるんちゃうやろか」
 「何言うてんの。夢ちゃうわ。優勝や」
 ユキは、立ち上がって、観客に向かて手を振って、声援に応えた。

 ユキは、次のスウェーデンの大会でも4位にはいり、世界ジュニアグランプリのファイナルにも出場することができた。しかし、世界ジュニアグランプリのファイナルでは、ジャンプでの転倒が多く6位になってしまった。そんな中、他の日本人選手2人が1位と3位で
目の前で、ユキの大好きなエキシビジョンを見せつけられることになり、悔しいシーズンの幕切れとなった。
 「私のホンマの勝負は、エキシビジョンやのに。それに出られへんなんて、絶対許されへん。来シーズンは、絶対やったるねん」
 ユキは、文字通り悔しさをバネに、練習に励んだ。
 

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