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〜 Excellent Spin Fan Board 〜

◆ エクセレントスピンー栄光なき天才スケーター(フィクション)
[RES]
明石のおじさん
2012/03/15 (Thu) 10:24

12.死闘

 メロディが鳴り始めた。
 ユキ特有の柔らかく体を広げていく動作と共に、ゆっくりと滑り始めた。                
 他のスケーターの様な滑走音は、ほとんどしない。リンク中央から渦を巻くように加速し、最初のトリプル・トリプルが決まったかのように見えた。ジャンプの前からジャンプ終了までの流れは誰が見ても最高の美しさを醸し出していたが、わずかに回転不足を採られる。
 スケーティング、体のライン、首、腕、指先全てが音楽と一体となって、しなやかに流れていく。
スパイラル、スピン、イナバウアに会場が静まり返る。
 そして、いよいよ全てをかけた中盤のトリプルルッツジャンプ。
一瞬、時間がとまった。
どの観客にも、スローモーションで、いぶし銀のように輝く羽を折りたたみ舞う1羽の白鳥に見えた。
しかし、着氷の瞬間、折れた翼でバランスを崩した白鳥は、人の姿に戻り、氷上に叩きのめされた。
再び、時間が止まった。
しかし、次の瞬間、氷の上なのにユキのまわりにユラユラと陽炎が沸き起こったかと思うと、これまで見たこともないような最高の笑顔を浮かべたユキは、踊りだした。もう、ユキから足の痛みは消えていた。
採点基準を超えていた。
全身全霊、ユキが考え出した彼女の肉体の全てを使ったステップ。
観客からは、ジャンプの失敗など消えていたというより、もはや翼の折れた白鳥の演技の一部にしか見えなかった。
スタンディングオベーション。
いつまでも、鳴り止まない拍手の渦。
すでに、キス&クライへ向かおうとしていたユキを、コーチが制して、
氷上へ指さしてユキに何か語りかけている。
ユキは、氷上の真ん中で、困惑している次の演技者を指さして観客を制するゼスチャを繰り返した。
そして、観客が静かになると、次の演技者に一言二言声をかけながら肩を叩いて、キス&クライへ向かった。
 結果が出るまで、短くも長い長い時がすぎる。
 覚悟はしていたが、順位は後退した。しかし、会場は割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
 「何も、思い残すことはなかった」と言いたいところだが、諦めきれない気持ちはいっぱいあった。

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